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第103話 告発状の三つの名

作者: 花柳響
last update 公開日: 2026-08-18 06:00:43

 画面に並ぶ二つの宛先を一つずつ追った。告発状は完成し、添付ファイルも揃っている。それでも、送信日時だけが空白だった。

 メールの下書きには、添付予定のファイル名が残っていた。

 内容証明案。送金一覧。診療記録照合表。寄付金流用疑義。

 母の生活感とは違う、硬い名前ばかりだった。けれど、ファイルの並びには妙な几帳面さがある。日付順。相手先別。修正済みのものには小さく済とつけてある。

 母らしい、と思った。

 台所の保存容器にも、あの人は同じように日付を書いた。冷蔵庫の中の味噌まで、いつ開けたものか分かるようにしていた。あの癖が、こんな場所にも残っている。

 私はファイルを一つ開いた。

 内容証明郵便の差出記録。

 画面の中ほどで、指が止まる。

「差し止め……」

 発送直前、代理人による受領扱い。

 その下に、署名の画像が貼られていた。

 白鳥清隆。

 父の名前だった。

 画面の白さだけが、目に痛かった。

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